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■ 第2話  入国拒否

1979年12月17日午後4時30分、成田空港からインド航空でタイのバンコックに向かった。

持っていた航空券は、バンコック経由カトマンズの往復キップで、有効期間1年。

今日はバンコックに泊まり、明日ロイヤルネパール航空の便でカトマンズまで行く。そこまでは飛行機の予約がされていた。

その先は全く予定がなく、どこをどう歩いてもよいが、1年以内に帰らないと帰りの航空券が無効になる。

所持金は2000ドル(当時約50万円)だった。
  ※ 当時の為替レートは、1ドルが約250円


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生まれてはじめて乗る飛行機は快適だ。

スチュワーデスはインドの民族衣装サリーを着ていて美しい。 機内食なんか食べてリッチな気分

調子よくなって、スチュワーデスに英語で、「オシボリを持ってきてくれ」と言ってみた。



実はこれが、私が生まれて始めて外国人に英語で話しかけた言葉だった。

彼女は「は?」という感じで困惑顔



もう一度言ってみた。

それでも彼女は「は?」
・・・・

・・・もうあきらめた。 (-_-;)



機内アナウンスは、はじめにヒンディー語で、次に英語。
英語の方を真剣に聞いていたがさっぱりわからない。

・・・これから先にただならぬ不安を感じざるを得なかった。 (-_-;)



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夜中の12時頃、タイのバンコックに降りるため飛行機は高度を下げ始めた。

スチュワーデスが客に、なにやらカードを配っている。 やがて私のところにも来たが、カードは2枚あり、英語でたくさん何か書かれている。どうも出入国カードというものらしい。

機内アナウンスを必死で聞いてみると、これを書いておいて、空港で差し出すということらしかった。



さあ大変だ!

カバンから英和辞書を取り出し、わからない単語をいちいち調べ始めた。

質問に答えるカードなのに、質問の意味すらわからない。 もたもたしているうちに着陸態勢に入ってしまった。

飛行機が空港に到着し、乗客が立ち上がってぞろぞろ歩き始めたのに、私だけがまだカードを書いているではないか!  焦ること焦ること!

結局、一番最後に飛行機から降りる羽目になった。




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空港の係官は実に横柄だ。

なにか、こちらが犯罪者であるかのような気分にさせられる。


1つ目のゲートは通過したが、2つ目のゲートで引っ掛かった。  係官は私をジロッと見て、「お前は通さない。」と言う。

えっ! あまりに意外な言葉に、最初は何を言われているのかわからなかった。


「お前は通さない。」

「泊まるところが決まっていないではないか。」
・・・とか何とかそのような意味のことを言っている。


私は必死になって反論した。



「カードには泊まるホテルの名前は書かなかった。」  「ここを出たらホテルに向かう。」  「マレーシアホテルに泊まる。」



英語力がないから、会話は短いセンテンスごとにブツブツ途切れている。

   とにかく、思いついたことを必死で話す。

えーっと、えーっと、後は何を話せばわかってもらえる?

そうだ! 「アイアム、ツーリスト!(私は旅行者だ!)」
・・・そんなもん、当たり前だろうが!・・・



係官は全く聞いていない風で、

「お前は今晩、そこで寝ろ」と言って指差した。 指差した先は、空港の床の片隅だ。ゲートの外側だ。

つまり入国させないということなのだ!



「それでは私は荷物を受け取れない!」

またも必死で話したが、係官はもう終わりという感じで、こちらを見向きもしない。


さあー、あせった!!

初めての海外で、一人旅で不安を抱えていたところに、不安が的中だ!

どうすればいい。どうすればいい・・・

動揺を抑えきれない。




日本で読んだ「アジアを歩く」という、あまり詳しくないガイドブックに、
「タイでは服装に厳しく、あやしいと見る人物には入国を拒否することがある。」 と書かれていたことを思い出した。

そうか、もしかするとあやしい人物と思われたのかも?

米軍放出品の軍服みたいな服を着て、日本人には珍しくヒゲも生やしている。

あっ! もしかしたらそうかも。 でも今さら後悔しても遅い。



どうしよーー! と思ってふと辺りを見回すと、
二つほど離れたゲートの別の係官が、こちらを手招きしているのが見える。

行ってみると、その係官は、ここから通れというふうに合図する。

やった!  そのゲートから通過した。入国できたのだ。





ふと、気配を感じて振り返ったら、あの、入国拒否した係官がこちらに向かって走ってくる!

うわーっ! 一瞬すごい恐怖を感じて、私は走って逃げた。

空港内を全力で走って逃げた。係官が追ってくる!




どれくらい走っただろう。

振り返ったら係官はもう追ってこなかった。

袋小路に逃げ込んだらあやうく捕まるところだった。 まだ若くて、係官より走るのが速かったから助かったのだ。



入国できたものの、心はすごく焦っていた。早くこの空港を出よう!

荷物はどこで受け取るんだ?

飛行機に乗るのがはじめてだから、すべてがオロオロしていた。 荷物受け取りのターンテーブルもはじめて見た。

もう、ほとんどの乗客は空港から出てしまい、私が最後だったから、私の荷物はすぐに見つかった。

私の荷物は、ターンテーブルをひとり寂しく回っていたのだ・・・・




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急いで空港の外に出た。真夜中なのにむっとする暑さ。

タクシーの運転手たちがたくさん待ち構えていて、しつこく寄ってくる。



同じ飛行機に乗っていた日本人二人と、3人でタクシーに相乗りすることにした。 ホテルは予約などしていなかったが、マレーシアホテルという名の安ホテルがあるということを日本で聞いていたから、とりあえずそこを当たって見よう。


ところが、マレーシアホテルに着くと、運転手が一人で降りてホテルの中へ入り、すぐに出てきて、満室だそうだと我々に告げる。

「私がいいところを知っている。」 というので、しかたないから任せることにした。


今から思えば、運転手は、これから我々を連れて行くホテル側とグルになっていたんだろう。

満室だという話は我々が直接聞いたことではない。 そんな簡単なこともわからないほど、はじめのうちは甘ちゃんだったのだ。



やがて、Century Hotel という、たくさんの電球がピカピカ光る、見るからに怪しく、ケバケバしいホテルに到着

タクシーを降りたら、運転手とその仲間の男が「女を買わないか。」という。

もちろん断った。私は当時悪名高かった日本人売春ツアーの類ではない!

しかし彼らは、我々の泊まる部屋の中まで堂々と入り込んで粘っている。


なんで客の部屋の中まで運転手たちが堂々と入ってこられるんだ!

ホテル側も別にそれを止めたりしない。 いや、入ってきた男たちは、じつはホテルの人間なのかもしれない。



日本で読んだ本によると、「アジアではしつこい物売りが部屋に入ってくるときがあるが、そういう時はYou can go(行っていいよ。)と言えばたいてい引き下がる。」 とあったので、

運転手に向って「You can go!」 を連発してみた。  が・・・全く効き目無し (ーー;) 



しばらく粘られた後、なんとか追い返し、ベッドに入ったのが午前3時頃だった。

眠りにつく頃、部屋のドアをノックする音が聞こえる。
別の日本人いわく、「これは女が来たんだ。無視して寝よう。」・・



あーあ、大変なところに来てしまったなあ・・・疲れる!!

こうして旅の第一日が過ぎていった。


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カトマンズの路地にて

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第1話  旅の序章 第16話  屋根の上のシタール弾き 第31話  アラーよ、許したまえ
第2話  入国拒否 第17話  カルカッタにて 第32話  イランの印象(1)
第3話  強盗だー! 第18話  ヒマラヤの旅(1) 第33話  イランの印象(2)
第4話  TOMODATI! 第19話  ヒマラヤの旅(2) 第34話  イランの印象(3)
第5話  聖地の大晦日 第20話  ヒマラヤの旅(3) 第35話  中東にはホモが多い?
第6話  泥棒もひとつの「職業」! 第21話  ヒマラヤの旅(4) 第36話 「小アジア」の風景
第7話  船旅 第22話  ついに発病か? 第37話 イスタンブール到着
第8話  ヒッピーの聖地(海岸の小屋) 第23話  ポカラの公立病院 第38話 国民総商売人
第9話  ヒッピーの聖地(パーティー) 第24話  旅先で発病した人たち 第39話 銃撃事件
第10話  ヒッピーの聖地(LSD)   第25話  酷暑 第40話 旅の終わり
第11話  ヒッピーの聖地(朝の光と波の音は・・) 第26話  日本は「ベスト・カントリー」だ! 最終話 帰路・あとがき
第12話  インド人は親切だ? 第27話  目には目を?
第13話  田舎を行く列車の旅 第28話  沙漠の国
第14話  変わり始めた片田舎の町 第29話  「異邦人」の町
第15話  皆既日食を見た! 第30話  沙漠に沈む夕陽