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■ 第13話  田舎を行く列車の旅

皆既日食が見られるという千載一遇のチャンス!

予定を変更して、南インドの田舎町マブーブナガールへ向かうことにした。


午後3時半発の列車に乗って行こう!

自由席なので1時間も前に駅に着いた。これなら座れるだろうと・・・

ところが席はすでにいっぱいで、なぜか子供がたくさん座っている。



「旦那、席をキープしておいたよ。2ルピーだ。」

なんだと?!

この子供達は席をキープしておいて客からお金をもらうために座っていたのだ。

インドの駅には改札がないので、キップを持っていなくても取り合えず列車の中に入る
ことだけは出来る。後で車掌がキップを見に来るけれど・・・

ははあ、そうするとこの子供達は実にいい商売をしている。

しかし本来、席はキップを買った客のためのものだ。

「おまえはキップを持っていないだろう。俺は持っているぞ。その席は俺が座るんだ。
さあ、立ってあっちへ行ってくれ。」

「No! 旦那、この席は僕がキープしておいたんだ。2ルピーだ。」

言い争いしても理屈は全く役にたちそうにないと判断した私は、相手が子供だったこともあり、不本意ながら2ルピーでその席を「買う」ことになった。



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列車は蒸気機関車だった。

連結器の軋む音とともに、ゆっくりと走り出した。

懐かしい音と煙と臭いに包まれる。



日が暮れてあたりが暗くなるまでの外の光景は実に美しく、落ち着いていた。

インドの田舎は美しい。

田んぼが続き、ところどころに原始人たちの竪穴式住居のような家の集まった集落があって灯をともしていたり、渇き切った黄土色の岩山がボコボコ現れたり、

点在する椰子の木や、原色のサリーをまとった農民たちが野良仕事をしていたり、時にヤギの群れがいたり・・・

何にも無い岩山の間から、突然大きな湖が現れたり、光を反射する田んぼや池は独特な色合いを見せてその変化を見ているだけで飽きない。



デカン高原の大地に巨大な夕陽が沈み、しばらくすると西の空全体がなんともいえない赤い色に輝きだした。


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夜になったら、足や背中が猛然とかゆくなりだした。

はじめは蚊に刺されたのかなと思っていた。

でも、良く見たら3箇所ずつ赤い点になっている。

こういう噛まれ方は南京虫というやつだ・・と以前誰かに聞いたことがある。

ということは、どうやら南京虫にやられたのかな?

どうでもいいけどものすごく痒い。たまらん!



窓から外を見たら、気持ち悪いほどたくさんの星が出ている。

視力の悪い私でも、オリオン座の四角の中に三ツ星以外に12〜13個見ることが出来た。

なぜか気持ち悪い。

南京虫の痒さのせいか、あるいは星の数が多すぎるためか?



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グンタカルの駅に夜中2時頃着く予定が、3時過ぎになった。

ここで3時発のホーシュペット行きに乗り換えるつもりだったが、入れ違いにもう出てしまったそうなので、この駅の待合室に泊まる。 痒い!


大分長いこと寝たような気がして、あたりのざわめきに気がつき起きてみると、まだ6時で、3時間しか寝ていなかった。


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9時発の、レールのゲージが違う鈍行列車に乗ってハンピという小さな町に向う。

この列車は、インドにしてはめずらしく窓に鉄格子がない。
もちろん蒸気機関車だ。


田舎を走る列車は楽しい。

走り出したと思ったら、「さてっ」という感じで腰をあげた乗客のおかみが、「オーレンジ、オーレンジ!」とやりだし(オレンジを売っている)、布切れを客席に一枚一枚バッと広げて売りつけるおやじがいたり・・・

そういうのを、別にうるさいというわけでもなく、じっと見ていたり買ったりするインドの人たち。

いろんな人々がいろんな商売をして生きているせいか、何事が起こってもそれらをすべて飲み込んでしまうようなインドの包容力の大きさを感じてしまう。


駅に停まると、急に騒がしくなって、どこかでおばさんたちが歌を歌っていたり、窓から薪の束を入れようとする子供たち、それを助けようとする中の乗客たち・・・

隣では盲の歌歌いが歌っている。


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私の目の前に3〜4歳くらいの女の子がやってきて、珍しそうにニコッ笑い、そのままジーッと見ていてそこを動かない。

目を合わせても、向こうは全く目をそらそうとしない。

大きな瞳に見つめられながら、ただ座っているしかなさそうだ。

女の子は、本当にいつまでもいつまでもジーッと私を見ているのだった。


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インドの人たちのなにげない立居振舞は素敵だ。

彼らは、単一の用途にしか使えないモノをたくさん持っているわけではなく、そのかわりに一枚の布切れを多く用い、それをズボンみたいにしたり、

毛布がわりにしたり、サリーみたいに着たり、まるめてお金入れにしたり、頭にのせて荷物を運ぶ台にしたり・・・

サリーひとつとっても、実にいろいろな使い方があり、それをなにげなくやっているのを見ていると、これこそが文化なのだなあと感心してしまうのだった。


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ハンピに着いた。

マブーブナガールでの日食にはまだ日にちがあるので、ここで2〜3日待とうと思ったのだ。

ハンピは、最近になってゴアと同様にヨーロッパのヒッピー達が集まりだしたところだと聞いていた。


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物売りの子供たち
カメラを向けると嬉しいそうに微笑む

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第11話  ヒッピーの聖地(朝の光と波の音は・・) 第26話  日本は「ベスト・カントリー」だ! 最終話 帰路・あとがき
第12話  インド人は親切だ? 第27話  目には目を?
第13話  田舎を行く列車の旅 第28話  沙漠の国
第14話  変わり始めた片田舎の町 第29話  「異邦人」の町
第15話  皆既日食を見た! 第30話  沙漠に沈む夕陽