TOP南西アジア旅行記 > 第22話



『インド・ネパール地域を3ヶ月以上貧乏旅行している人の半数は肝炎にかかっている。肝炎はネパールの風土病である。』

・・・これは、日本を発つ前に読んだ本に書いてあった内容である。

結構ショッキングな話だが、まさか健康そのものであった自分の身に起きるとは考えられなかった。しかし現実は・・・


■ 第22話  ついに発病か?

ランタン谷のトレッキングで行ける最奥の地、ランシサ・カルカと呼ばれる附近のモレーン(氷河の押し出しによって作られた小山)の頂上、標高4200メートルあたりまで登り、
周囲に誰もいない静けさの中で、世界の屋根たるヒマラヤ山脈の堂々とした峰峰をしばし眺め、その圧倒的な大きさを堪能した。

ここに来るまでには、バスを降りてから歩いて最低でも5日ほどかかる。
おそらく一生のうちにもう一度ここに来ることはないであろう・・・



往復2週間歩き続けたトレッキングを終えてカトマンズに帰ってみると、ホテルには、出発するときにいた「お坊さん」や「モロさん」「中さん」たちはやっぱりまだそこにいた。

いつまでカトマンズに居続けるつもりだろう・・・

そしてもう一人、インドのバラナシで同じホテルに泊まったことがある小池さんがいる。

「あれっ! 小池さん。アフリカへ行ったんじゃなかったんですか?」

彼は以前、バラナシで私と同じホテルに泊まったときに、「これから中東を経てアフリカへ行く。」と話していたからだ。

「あれからいろいろあったんだよ・・・」

小池さんは語り始めた。



彼はバラナシで私と別れた後、別の街でインド人に話しかけられ、食事をともにした。
食事をした直後、急に頭が混乱し、訳が分からなくなっている隙にお金や小切手を盗まれてしまった。

そう、彼は食事の中に「アヘン」を盛られたのだ。

そのために、お金を盗まれただけでは済まなかった。
急激に大量のアヘンを盛られたため中毒状態となり、禁断症状に苦しむこととなったのだ。
彼はインドの病院に1ヶ月ほど入院を余儀なくされ、アヘン中毒はほぼ治まったものの、アフリカまで旅を続ける資金はなくなり、カトマンズへやってきたという。



なんて気の毒なんだ・・・

明日は我が身になるかもしれない出来事。

私がインド入国直後に警官たちからお金を巻き上げられたことや、列車の中で泥棒にあったことなどは、ほんのささいな出来事に思えてくる。

やはり旅は何が起こるかわからない・・・


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さて、私はこれからどうしよう?

西へ行こう。西へどんどん行けばヨーロッパへ道は続いている。
中東を横断してヨーロッパまで行って見よう。


そのためには、まず再びインドに降りなければならない。

前回インドに行ったときは、カトマンズからバスでパトナに向かい、途中で警官たちから金を巻き上げられたのだった。(怒)
あそこを通るとまたやられるかもしれない。

今回はその轍を踏まず、ネパールの中部にあるポカラから南へ下ることにしようと考えた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

出発前日、なんとなく体がだるかったので、「お坊さん」たちからパーティーにさそわれたとき断わればよかったのに、これが最後だと思って出たためか、のどが痛くてますますだるくなった。

風邪をひいたようだ。


出発の日の朝、風邪がひどくなりかけていたので、よほど行くのをやめようかなと思った。

しかしポカラ行きのバスは予約してあったし、人から見せてもらったガイドブックには、
「ポカラまでは、直行バスで所要時間5〜6時間。道路も立派でアル。」
などと書かれていた。

まっ、行ってみるか!


ボロくて狭くて時間のかかるローカルバスはいやだから、わざわざ早朝7時発のエクスプレスを予約していたのだ。

ところが、バスはローカルバスほどではないものの、やっぱり狭くて混んでいた(>_<)
特に私の席はエンジンの真上で熱いこと!

運転席の横にラジエターの給水口があり、なぜか蓋がない。
時々そこから沸騰した湯があふれ出た。



バスはカトマンズを出て30分ほどで故障し、約2時間停車。

やっと走り出したと思ったら20分後にパンク。

それも土埃が3cmくらいの層をつくっている埃っぽいところで・・・

なんだかんだで、実にしんどいバスの旅で、ポカラには夕方5時過ぎに到着。

ガイドブックに書いてあった「5〜6時間」どころか、結局10時間以上かかった
ではないか!

ポカラ到着後、ホテルを捜して倒れこむように横になった。

体はとてもだるくなっていた。

ここで、風邪が治るまでしばらく寝ていよう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

翌日、10時からしか開かない郵便局へ行って、日本からの手紙を受け取った。

郵便局の係員は、まるでわれわれ客を無視しているかの如く、のんびり淡々と人を待たせておいて別な仕事をしている。

半分ケンカみたいなやりとりをしてやっと受け取ったのは、一通だけだった。

もっとたくさんの人が送ったはずだが、1ヶ月以上前のものは捨ててしまうのだそうだ。(怒)




ホテルへ向って歩くのが辛い。異常なほど疲れる。

ホテルに着いたときは、すでに階段を立って歩けなくなっていた。

ふらふらして、四つん這いになって、階段を這い登り、部屋に倒れこんだ。

もう何もする気がしない。

異常に疲れる。立って歩けない!




   これは、ただの風邪ではないんじゃないだろうか?


日本にいたとき読んだ本に、「インド・ネパール地域を3ヶ月以上貧乏旅行している人の半数は肝炎にかかっている。肝炎はネパールの風土病である。」と書いてあった。

体重も、日本を出たときは68kgだったのが現在58kgで、3ヶ月で10kgも痩せていた。

肝炎にかかると、体がだるくなるという。

ひょっとしてそうだ。

もしそうならば、簡単には治らない。ヨーロッパまで行くことをあきらめて、日本に帰らなくてはならない。

   ああ、いやだいやだ。

仮に日本へ帰るにしても、この状態で帰れるだろうか。

肝炎はなかなか完治しないというから一生こうなるのか・・・

いろいろ考え込み、とても心細くなった。

ホテルの廊下の窓から名峰マチャプチャレが間近に見えたが、そんなものはもうどうでも良い。気分は最悪だ。


明日、病院へ行ってみよう・・・


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カトマンズで見かけた塔

 
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第1話  旅の序章 第16話  屋根の上のシタール弾き 第31話  アラーよ、許したまえ
第2話  入国拒否 第17話  カルカッタにて 第32話  イランの印象(1)
第3話  強盗だー! 第18話  ヒマラヤの旅(1) 第33話  イランの印象(2)
第4話  TOMODATI! 第19話  ヒマラヤの旅(2) 第34話  イランの印象(3)
第5話  聖地の大晦日 第20話  ヒマラヤの旅(3) 第35話  中東にはホモが多い?
第6話  泥棒もひとつの「職業」! 第21話  ヒマラヤの旅(4) 第36話 「小アジア」の風景
第7話  船旅 第22話  ついに発病か? 第37話 イスタンブール到着
第8話  ヒッピーの聖地(海岸の小屋) 第23話  ポカラの公立病院 第38話 国民総商売人
第9話  ヒッピーの聖地(パーティー) 第24話  旅先で発病した人たち 第39話 銃撃事件
第10話  ヒッピーの聖地(LSD)   第25話  酷暑 第40話 旅の終わり
第11話  ヒッピーの聖地(朝の光と波の音は・・) 第26話  日本は「ベスト・カントリー」だ! 最終話 帰路・あとがき
第12話  インド人は親切だ? 第27話  目には目を?
第13話  田舎を行く列車の旅 第28話  沙漠の国
第14話  変わり始めた片田舎の町 第29話  「異邦人」の町
第15話  皆既日食を見た! 第30話  沙漠に沈む夕陽