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■ 第34話  イランの印象(3)


封鎖中のアメリカ大使館、その正面玄関の土嚢や機関銃をいっしょに見物?した男はその後トルコに向けて旅立って行き、
入れ替わりにテヘランで私が泊まった安宿「アミールカビールホテル」にやってきた日本人旅行者は肝炎にかかっていた。

肝炎はネパールの風土病。

話を聞くとやはりネパールやインドを数ヶ月旅した後、ここまでやってきたという。

肝炎患者は塩の入っていない料理を食べる。

ホテル代節約のため彼と同宿することにしたが、私は彼につきあって塩の入っていないマズーい料理を自炊して分け合って食べることにした。(-_-;)

これも経験のうち・・・・でもあまりにもマズい!

勢いで「一緒に料理をつくろう。つきあうよ。」と言ってしまったものの、早くこのホテルを出ようかな・・・


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同じ宿にいたもう一人の日本人は、インドから自転車をこいでここまで来たという。
彼曰く、「運命に従い、ただ自転車をこいで西へ向う。感性を磨きたい。」

   うーん、何てカッコイイんだろう。

もしも日本で聞いたら超クサイこんな言葉でも、現地で聞けば説得力があった。

話せば話すほど人柄が滲み出る、素敵な人だ・・・



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イランでは会話が通じなかったものの、話している言葉の端々から人々が何について話しているのかは想像がつく。

大人たちはもちろん、子供たちも結構政治的な話をしていることが伺われた。

娯楽の少ない、政情が不安定な国だからといえばそれまでだけれど、なにか国全体が、大人も子供も、国や政治を考えているといった感じを受ける。

日本の子供や若者が、アニメやゲームなど、現実世界ではなく架空の世界のことで頭がいっぱいなのとはえらい違いだ。




イランでは、すべてがなにか殺伐としている印象を受けた。

どこへ行っても同じ料理。

レストランでは、人々は主食のナンを別なところで買って持参して入るようだが、とにかく食べ物を残すこと!

インドやパキスタンでは食べ物を残すなんて考えられないことだったのに。



でっかい冷蔵庫が置いてあったり、食べ物の残りかすが散らばって、日本の無人自動販売機ショップにいるようで汚い。

アメリカと敵対していても、商品はアメリカ製が多く、缶詰やコーラなどが氾濫している。

イランにはプロの乞食は少なくて、比較的きれいな格好をした普通のおじさんおばさんたちが、通りすがりに金をバクシーシ(施しを受けること)する。

その様子がいかにも「金をよこせ。さあ、よこせ。」みたいで実に感じが悪い。


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中年以上の女性は私の顔を見ると、警戒心をありありと浮かべるか、若しくは手を出して「さあ、よこせ。」式にバクシーシするだけだ。

お金をあげても、もちろんお礼の言葉などない。

店で何か買っておつりをもらうにしても、たいてい少なく渡したり、値段を聞くと相場とは全然違う高い値を答えたり・・・

そういうことはインドでもあるのに、この国では同じことをされても(言い方は悪いけど)可愛げが無い。


そして、交通のひどさ。

画一化した街並みと風俗。

強盗まがいの中年乞食女。(私がカバブを食べているのを、脇から強引にむしりとって食べたりする。周囲の人もそれを咎めない。)

子供の肥満児も、旅に出てはじめて見た。




この国は変に近代化していて、滑稽なくらいバランスが悪い。

親米路線だった前パーレビ政権時代にアメリカが持ち込んだ文化の、変なところだけイランに残っているといった感じがした。



オーバーハングした岩山の下の斜面に家が立ち並ぶ
トルコ国境に近い町 マク




5月17日、例によって夜出発のバスでトルコ国境近くの町マクへ。

翌朝、ノアの箱舟が登ったといわれる、雪をいただくアララット山が間近に見える。
大草原と美しい山々、丘の連なり・・・素晴らしく美しい。

同じ砂漠や草原でも、羊を追う人がステッキを持っているところなど、パキスタンと違ってどこかヨーロッパ的だ。




マクから車をヒッチハイクしてトルコ国境のバザルガンへ・・・・

料金は、はじめ20リアルという約束だったが運転手が途中で50リアルだと言い出し、途中から乗ってきた生意気そうな子供が150リアルだと抜かしだしたり、すったもんだして結局100リアル払う羽目になった。

クッソー!  イラン人なんか嫌いだ!!

それでも彼らは自分達のことを「イランはアラーのもとに民主的ないい国だ。」
などと言っている。

どこが「いい国」なんだ!!



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でも後から思い出した。

自転車でインドからイランにやってきた彼は、パキスタンの沙漠地帯を横断しているとき疲れ果ててしまい、通りかかったバスに乗ろうとしたら、料金なしで乗せてくれたという。

イスラム世界では富める者が貧しいものに施しをするのは当然の義務なのだという。
そして困っている者は助ける。


私は裕福な国日本からやってきた裕福な者に見えたのだろうか。

お金持ちの国からやってきた旅行者にとってはイランはいい国ではない。
でも現地の人にとってはそれは関係ない。

「アラーのもとに民主的な国」ね・・・

お国柄が違うというのは面白いかも。


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トルコ国境付近から見える、「ノアの箱舟の山」  アララット山
手前は羊を追う少年

 
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第1話  旅の序章 第16話  屋根の上のシタール弾き 第31話  アラーよ、許したまえ
第2話  入国拒否 第17話  カルカッタにて 第32話  イランの印象(1)
第3話  強盗だー! 第18話  ヒマラヤの旅(1) 第33話  イランの印象(2)
第4話  TOMODATI! 第19話  ヒマラヤの旅(2) 第34話  イランの印象(3)
第5話  聖地の大晦日 第20話  ヒマラヤの旅(3) 第35話  中東にはホモが多い?
第6話  泥棒もひとつの「職業」! 第21話  ヒマラヤの旅(4) 第36話 「小アジア」の風景
第7話  船旅 第22話  ついに発病か? 第37話 イスタンブール到着
第8話  ヒッピーの聖地(海岸の小屋) 第23話  ポカラの公立病院 第38話 国民総商売人
第9話  ヒッピーの聖地(パーティー) 第24話  旅先で発病した人たち 第39話 銃撃事件
第10話  ヒッピーの聖地(LSD)   第25話  酷暑 第40話 旅の終わり
第11話  ヒッピーの聖地(朝の光と波の音は・・) 第26話  日本は「ベスト・カントリー」だ! 最終話 帰路・あとがき
第12話  インド人は親切だ? 第27話  目には目を?
第13話  田舎を行く列車の旅 第28話  沙漠の国
第14話  変わり始めた片田舎の町 第29話  「異邦人」の町
第15話  皆既日食を見た! 第30話  沙漠に沈む夕陽