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■ 第12話  インド人は親切だ?

南インド東海岸にあるマドラス(チェンライ)の日本領事館を、日本からの手紙の受け取り場所に指定していたため、マドラスに着いてから真っ先に領事館を探した。

旅に出てから2ヶ月が過ぎ、そろそろ日本の友人や家族の手紙を見たかった。

手紙を見るのをとても楽しみにしていたのに、肝心の日本領事館がなかなか見つからない。
地図に書いてあった場所にはなかったのだ。


周囲の人たちにいろいろ聞いてみたところ、最近場所をかえたらしい。

それならばと、新しい領事館への行き方を、何回も何回も、たくさんの人に尋ねた。



インドの人たちは、道を尋ねられると、皆ものすごく頑張って教えてくれて、中には、一度別れた後で100mくらい追いかけてきては、

「さっきはこう言ったが、こうこう行けばもっと早く行くことができる。ところで、あんたが日本に帰ったら俺に手紙をくれないか。住所はこうだ・・○○・・」
なんて人もいる。

10人に聞けば10人とも、日本で考えられる最高級の親切さで教えてくれる。

   嬉しいことだ。

しかし、唯一、そして最大の難点があった。

それは、「彼らの言うことがほとんど信用できない」ことだ。

10人いれば10人とも皆言っていることが違い、ポリスでさえ、間違ったことを教える始末だ。

いかに親切といえども、終いには怒りがこみ上げてくるのだった。

結局、一日探してもついに領事館を発見できなかった。


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楽しみにしていた日本からの手紙を受け取ることができず、がっかり!

腹が減った。怒りと落胆と失意のうちに、街中の混雑した定食屋に入った。
人も多いし声が飛び交う。すごい活気だ。

「野菜カレー定食」とでもいうのだろうか、注文すると私の目の前に大きなバナナの葉っぱが敷かれた。これが皿らしい。

給仕のおっさんが、大きなバケツを持ち歩き、バケツに入っているライスをドサッと葉っぱの上に乗せてゆく。

今度は別のおっさんが、さまざまな色の野菜カレーを次々に葉っぱの上に乗せていく。
いくら食べても料金は同じ。つまり食べ放題だ。

こちらが注文しなくとも、残り少なくなるとおっさん達が勝手にライスやカレーをつぎたしてゆく。おっさんの笑顔がとても素敵だ。

一見怖そうな黒い顔のおっさんが、首をちょこっと曲げてニッと笑ってみせる。

これを見ていたら、さっきまでの怒りや失意はきれいに消え去り、不思議なことに、湧き上がるような元気が出てきた。


インドの暑さと、原色のストレートのエネルギーがもたらす不思議なパワー!
小さなことにウジウジしてんじゃねー!!  



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マドラスで泊まっていたホテルの、イスラム教徒の従業員のひとりに給料を聞いて見た。
泊り込みで月給75ルピー(当時のレートで約2250円)だそうだ。

   ホントかよ! ウソみたいに安い!

私がここへ来る前に日本でアルバイトしていたときは、土木工事現場で一日8500円もらっていたから、8500円×月25日として212,500円。

彼の給料との差はおよそ百倍!!

私が日本で一日アルバイトをしただけで、彼らの3ヶ月分の給料を稼げるのだ。

私はなんて恵まれた国に生まれたんだろう!

こうして自由気ままに外国を旅することもできるなんて。



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街を歩いていて思うのだが、インド人、特に若者たちの、あのすさまじいばかりの外国人に対する好奇心はどこから来るのだろう。

彼らが、カーストや社会習慣、貧困等に縛られて、一生涯自分の生活の場所と形態を変えることができないことからきているのではないか・・

しかし、それならそれで、反動として若者や子供の暴力沙汰や犯罪がありそうなのに、そういうことはほとんど聞かない。

あまりにも貧困だとグレている暇さえなくなるのか、あるいは宗教の影響で暴力がタブー視されているのか・・・

とにかくインド人たちは街中でもどこでも、凄まじい口喧嘩をあちこちでやっている。
今にも手が出そうな華々しい口喧嘩だが、実際に暴力になったのを見たことがない。



夜10時頃、街に散歩に出た。

野犬があちこちでやかましく咆え、道端にたくさんの路上生活者たちが寝ている。

ふと見上げると、街灯に浮かび上がったイスラム建築の幻想的な美!

この対照がインドの現実なのかなあ。


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マドラス滞在中、ハイデラバート近くのマブーブナガールという町で皆既日食が見られるという情報を得た。

日食は2月16日にあるそうだ。今、2月12日だ。

真昼間に空が暗くなり、黒い太陽が現れる皆既日食! 
それは普通の人間なら一生に一度見られるか見られないかの一大天体ショーだ。

千載一遇のチャンス! これを逃す手はない。

苦労して何時間も並んで手に入れたカルカッタ行き寝台列車のキップをキャンセルして、日食が見られるというマブーブナガール方面に向かおう!

いつもは観光客などほとんど行かない、南インドの田舎町だ。


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インド中央部 ハイデラバードの街並み

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目    次
第1話  旅の序章 第16話  屋根の上のシタール弾き 第31話  アラーよ、許したまえ
第2話  入国拒否 第17話  カルカッタにて 第32話  イランの印象(1)
第3話  強盗だー! 第18話  ヒマラヤの旅(1) 第33話  イランの印象(2)
第4話  TOMODATI! 第19話  ヒマラヤの旅(2) 第34話  イランの印象(3)
第5話  聖地の大晦日 第20話  ヒマラヤの旅(3) 第35話  中東にはホモが多い?
第6話  泥棒もひとつの「職業」! 第21話  ヒマラヤの旅(4) 第36話 「小アジア」の風景
第7話  船旅 第22話  ついに発病か? 第37話 イスタンブール到着
第8話  ヒッピーの聖地(海岸の小屋) 第23話  ポカラの公立病院 第38話 国民総商売人
第9話  ヒッピーの聖地(パーティー) 第24話  旅先で発病した人たち 第39話 銃撃事件
第10話  ヒッピーの聖地(LSD)   第25話  酷暑 第40話 旅の終わり
第11話  ヒッピーの聖地(朝の光と波の音は・・) 第26話  日本は「ベスト・カントリー」だ! 最終話 帰路・あとがき
第12話  インド人は親切だ? 第27話  目には目を?
第13話  田舎を行く列車の旅 第28話  沙漠の国
第14話  変わり始めた片田舎の町 第29話  「異邦人」の町
第15話  皆既日食を見た! 第30話  沙漠に沈む夕陽